私が所属する研究会の総会、2日目です。
今日もすばらしい再生療法や歯周形成外科手術ばかりです。
しかし、圧巻は80歳の現役歯科医師の50年にわたる臨床の症例発表でした。
特に有名な方ではありません。講習会の講師でもありません。
何十年も前の古臭い治療で、ただどのような結果になったかを報告するだけだろうと恥ずかしながら思っていました。
冗談ではありませんでした。今ではごく一般的な治療法ですが当時としては最先端の治療法を、とことんまで丁寧に追求していました。
40年前なのに今の一般臨床以上の精密さで治療がなされているのです。道具も材料も今よりはるかに遅れた時代にです。昭和40年代にです。
根管治療も補綴治療も歯周治療も精密になされ、30年以上もったブリッジ症例を複数提示されたのです。
エビデンスの上ではブリッジは7年で50%やり直しと言われているのにです。
そもそも40年も前のレントゲンや口腔内写真を保存していること自体が大変なことです。
60台も半ばになってからインプラント治療を始め、術者75歳位の時に84歳の方にインプラントをされた症例も出していたのですが、インプラントだけでなく残存歯の処置もすばらしいものでした。
普通80代の方には、失礼ながら健康のことや残りの寿命の長さを考え、大きな外科処置はしません。
しかし、先生は
「患者も術者も老齢になっても治療が妥協的になってはいけない」と講演されていました。
あまりに丁寧な治療をしていた為に、
当時の厚生省の技官から「自分のしたい診療をするなら保険医を辞めてからやれ」と注意を受けたこともあったそうです。
もはや歯科医学というよりも歯科医道といったところです。
「世間に名を売ることなく、ひたすら技術向上に研鑽し一つの物事を突き詰めていくと、この様なすばらしい治療ができるようになるのか。」と思いました。
感心を通り越して感動でした。私だけでなく、主催者の先生も感動されていました。
今後、この先生の発表を聴く機会はないと思います。
世間に名は知られなくても、この発表を聴いた人の心には刻まれることになると思います。
私は今度40歳になります。40年後にこの先生の域に達するかどうかはわかりませんが、努力して何も得られないと言うことはないと信じます。
posted by 清水 信行 at 22:48|
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