「歯が痛い、歯磨きの時の水がしみる、肉を噛むと歯が痛む」 という患者さんとの会話です。
私:「夜、歯ぎしりしていませんか?」
患者さん:「いえ、やって無いと思うし、人から言われたこともありません。」
私:「実は歯ぎしりは、ほぼすべての人がやっているのです。むしろやっていない人のほうが珍しいくらいです。ただ、力の大きさや、やっている時間に個人差があるのです。精神的なストレスも関係します。虫歯は見られないし、歯もかけているところはありませんので、歯ぎしりの疑いが強いです。マウスピースをつけてみませんか?」
患者さん:「・・・わかりました。・・・」
少々納得できず、しぶしぶという感じでした。
1週間後です。
「いや、ほとんど凍みなくなりました。10段階評価の1〜2です。やっぱり食いしばっていたみたいです。」
この様なケースは珍しくありません。
歯ぎしりがひどいと、はの根本が欠けてくることもあります。その欠けた部分が凍みる場合は、そこに樹脂を貼り付ければ即日凍みは減少します。


歯ぎしりで根本が欠けてきた方の写真と、歯ぎしりによる応力が歯の根本に集中することを示した図
問題は見た目に問題がない場合です。
歯ぎしりの自覚がある方はほとんどいませんから、なかなか治療に理解を示して頂けない場合もあります。
「虫歯はない、だけどどうしても痛みや凍みが引かない」という方は、ためしに歯ぎしりの治療を受けてみてください。
以前はそのように考えられていましたし、そのようなケースもあります。
しかし、ケースとしては圧倒的に力による欠損の場合の方が多いと思います。
この写真でも斜め前の歯(右上2、右下3)に大きな楔上欠損がありますが、利き腕が右の人はこの部位を強く磨くことができません。
ご自身で試してみるとわかりますが、脇が窮屈になってしまい、歯ブラシをこの部位に当てることは難しいと思います。
当てることも難しいのに、まして歯ブラシで削れるくらいの力を入れるのはかなり難しいと思われます。